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境界知能・軽度知的障害

【読書感想】歪んだ幸せを求める人たち 要約

幸せについて具体的に上げると、家族や恋人と過ごす、おいしい料理を食べる事や趣味に打ち込む事などが連想しやすいと思います。

確かにこれらに熱中すると脳内物質の働きが活発になり、幸福感が高まりやすくなると言われています。

われわれ人間は幸せを求めそれを感じるために生きているといっても過言ではありません。

しかし今回読んだ『歪んだ幸せを求める人たち』という本はタイトル通り、歪んだ幸せを求めた余り、非行に走った少年院の少年の犯行動機や幸せが歪む原因について書かれています。

この書籍は『ケーキの切れない非行少年たち』の続刊で、宮口教授の幸せに対する見解が書き上げられています。

この記事ではこの本の読書感想と印象に残ったポイントをまとめてあります。

各章
  1. 歪んだ幸せを求めてしまった人たち
  2. 幸せの前に立ちはだかった5つの歪み
  3. 身近にある歪み
  4. 歪みの壁を乗り越えるために

幸せに潜む5つの歪み

幸せという概念には歪みが存在し、それが五つもあると書かれています。

この五つの歪みは場合によっては、自分が幸せになれたとしてもあなたの身近にいる人、知らない誰かを不幸にする危険を持っています。

歪みについて個別に説明していきます。

五つの歪み一覧

  1. 怒りの歪み
  2. 嫉妬の歪み
  3. 自己愛の歪み
  4. 所有欲の歪み
  5. 判断の歪み

怒りの歪み

怒りについてあまり良くない印象が世の中にはあります。

私自身怒りの制御があまり得意ではなく、思い通りにいかない事があれば癇癪を起こすことがあったりします。

それでも怒りという感情は自発的に発生するもので、人間の怒りはそのほとんどが悲しみから引き起こされるものです。

もしも怒りを感じなくなったら家族や親しい友人が亡くなると、それを悲しむ感情すらなくなってしまうかもしれません。 悲しむ感情がないと他人を思いやり慈しむこともなくなり無機質な機械になるようなものだと個人的に思います。

しかし怒りは歪んだ幸せに最も繋がりやすいという事は確かで、それにつながるいくつかのケースが存在します。

  • 怒りの責任のありかを間違えること
  • 自分自身の不満を他人に向けたり、職場での怒りを家庭に持ち込んだりすること
  • 怒りの対象を広げすぎること
  • コロ禍におけるある国への怒りなど、怒りをある特定の人種に向けたりすること
  • 過剰反応して怒りを爆発させること
  • 子どもの些細な失敗に対して過剰に反応し、虐待などをしてしまうこと
  • 怒りのはけ口を間違えること
  • 怒りを自分自身に向けて、自傷行為や薬物依存に至ること

引用元:歪んだ幸せを求める人たち:怒りによってゆがんだ幸せにつながる場合

嫉妬の歪み

  • 自分と同等か、それより劣っているものが優位に立つ
  • 自分の嫌いなもの、軽蔑しているものが優位に立つ
  • 自分と同姓のものが遺位に立つ
  • 自分より優れたものから優位を誇示される

引用元:歪んだ幸せを求める人たち:嫉妬を生むきっかけとなる4つの条件

日本の現代社会は他人との競争が激しい世界であり、例えば学校は大勢の子どもが成績を競っているのが顕著です。

境界知能や軽度知的障害があるとその特性故にクラス内ではワースト5位に入るのがほとんどで、そのせいで比較的成績の良い同級生に笑いものにされ、劣等感を抱えがちです。

この劣等感が嫉妬に変わり、相手の能力や家柄をうらやむ心境に陥ったりします。

しかし、公平な手段で優位な立場に立てたとしても、逆転された者からは(ズルをした)と難癖を付けられることもあり、優位性にこだわりすぎると嫉妬の歪みが生まれると言えるでしょう。

自己愛の歪み

自己愛については自分が大好きなナルシストの印象で思い浮かばれるのがほとんどのようです。

この自己愛には二つの意味合いがあり、正常な心理学的機能と自己愛性パーソナリティーに分けられています。

自己愛も度が過ぎると、自信過剰になったり他人を見下す態度をとるなどの不適切な行動につながる恐れがあります。

所有欲の歪み

すぐに思いつく所有物と言えば、金銭や家、高級時計や自家用車などが該当すると思います。

所有欲にはいくつか問題点があり、このようなのがあります。

  • 必要以上に所有しているものに執着
  • 人が持っている物をねたむ
  • 自分の所有物を見せびらかす

欲望が強すぎると上記のような問題点が生じ、場合によっては相手の物を力づくで奪うなどの行為に及ぶ危険があります。

この本に書かれている窃盗罪を犯した非行少年の窃盗理由が以下の一覧になります。

  1. パチンコに使うお金が欲しかった
  2. お金を盗む友人の誘いに乗った
  3. 楽してお金が欲しかった
  4. 盗むのが最も簡単にお金が手に入る

認知能力に問題があったとはいえ、被害者からしたら身勝手な理由以外なんでもありません。

まさに執着が招いた所有物への歪みの一端と言えます。

判断の歪み

得られた情報から状況を認識し、評価・決断する能力が「判断」です。

世の中は様々な事件や事象が起きていて、それらの物事をSNSなどで早く知ることが簡単になりました。

しかしどれだけ大変な物事が起きても、それを脳内でどう想像するかは自分次第で結局どのように受け止めどんな行動をするのかも自分で決めます。

人間それぞれ考え方、思想が違っている生き物ですからどれだけ正しい情報を提供されても、個人によっては歪んだ受け取りをするのはよくあります。

判断が歪む原因には人気能力の他にも、集団生活での他人との交わり方にも要因があると言われ、個人だけでなく集団上での判断ミスが歪みを大きくしている可能性があると言えるでしょう。

他人のストーリーを知ると許容するきっかけになる

人によっては些細なことでも不快に感じ他人に怒りを向ける事があります。

そのような感情を呼び起こすたびに”どうしてあの人はそんなことをするのだろう”とか”そんな変なことをしなくてもいいのに”思い巡らす事が誰にでもあると思います。

相手の行動の背景、即ちストーリーを知ると起こした行動の理由に納得できれば、相手に対して共感する事もできたりします。

著者の宮口教授曰く、世の中のトラブルはお互いのストーリーを知らないことが原因だと思われ、家族との間に起きる喧嘩などもお互いの背景を知ろうとせずに起きた出来事でもあります。

それらのトラブルを減らすには、相手のストーリーを知るように歩み寄る事も必要ですが、現実はそうやろうにもなかなか難しいでしょう。

まずは自分で相手のストーリーを知る事ができる知識を身に着ける事が先になります。

ストーリーを知るには3つのポイントがあります

  1. みんな幸せになりたい
  2. みんな自分を見てほしい
  3. みんな人の役に立ちたい

みんな幸せになりたい

すべての人間の根底にあり共通しているのが「幸せ」という概念で、私たちはこれを実感するために生きています。

今の現代社会はとりわけ生き辛く、簡単に幸せになれないと言われています。

それ故に幸せになろうと様々なことを実行にしますが、時と場合によっては判断の歪みが生じ、これが歪んだ幸せにつながる危険があります。

歪んだ幸せになりうる悪い手段
  1. 幸せになるために邪魔な人物を排除する
  2. 他人の権利を妨害する
  3. 自分より幸せな人に嫉妬する

みんな自分を見てほしい

自分の評価を上げたい、自分は良い人だから認めてほしいなどの承認欲求は誰にでもあります。

だからこそ他人を気遣ったりフォローしたりする事で理解を深めようとするきっかけにもなりえます。 これは相手のストーリーを知る第一歩になります。

しかしどんなに相手のためと言いながらも、相手側がそれを認めて反応してくれなければ、相手に足して怒りを抱くケースがあったりします。

自分を見てほしいと思う人間は2つのタイプに分けられているらしく、共通点は相手に何らかの見返りを求めた行動である点です。

自分にかまってほしいタイプ

主な特徴

  • 回りくどい言い方ややり方をして、自分をアピール
  • 時にはすねたり、いじわるに感じられる
  • 自分だけ話を聞かされていないと思い込む
  • 嫌味を言ってくる
  • 他人の行動を妨害する

相手に尽くすタイプ

主な特徴

  • 基本的に献身的
  • 世話好きな人が多い
  • 尽くした相手が応じてくれないと怒りを感じる場合がある
  • 尽くすから自分を見てもらいたい⇒それが叶わないと裏切られたと感じる

みんな人の役に立ちたい

幸せについて具体的なものというのは曖昧なのですが、人間は誰かの役に立てることに大きな喜びや幸福感を感じられる説がこの書籍に書いてあります。 例えば他人に自分の知識を教える、大切な人の世話をし感謝される事があれば幸福度が上がります。

とある市の発達支援センターで我が子の発達相談をしにきた母親は、勉強が苦手でも将来人の役に立てる人間になってほしいと切実に願ったそうです。

この事例から見て、自分や自分の子供には他人の役に立つことが充実な人生を送れるという普遍的な価値観があり、人類の70パーセントにその価値観が浸透しているのではないかと考えられます。

自分より我慢できる人を知る

現状に不満があると、人はたびたび自分の境遇を嘆き、自分より充実した人生を送ってそうな他人にねたむ気持ちが生じ、嫉妬の歪みを生む可能性があります。

このような気持ちを消すのは非常に難しいので、嫉妬を含めた幸せに潜む5つの歪みをうまく制御することが本当の幸せにつながるのではないかと考えております。

自己啓発本を出版している人物は、(多少脚色を加えているかもしれませんが)大抵は読者よりも悲惨な体験をし、ひどい境遇にいても立派に生きてきた人達でもあります。

このような方々はどんな状況下においても人としての尊厳を保ち、そのうえで人間性を高めています。 そのストーリーの詳細を知れば”あの人は自分よりもっと苦労しているのに、自分はこんな些細なことでくよくよしたり、嫉妬したり怒ったりして恥ずかしい”と考え直すきっかけになるかもしれません。

自分が辛い状況に立った時、あの人ならどう行動していたか脳内でシミュレーションをし不幸な状況を比べてみると修正点が浮かび上がって改善できたケースもあると思いますので、自分と似たような境遇の人を探して手本とし、その方が本を出版していたら読んでみる、あるいはYouTubeチャンネルを開設していたら動画を見て触れる事で、歪みのない健全な幸せにつながるのではないかと私は思いました。

まとめ

「歪んだ幸せを求める人たち」は悪い事例の幸福について書き上げられていて、凄惨な事件はなぜ起きたのかその原因について知る事ができます。

しかし、良い幸福の事例についてあまり書かれておらず、本に書いてある事を実行して幸福度を上げたいという人にはあまりおすすめできる書籍ではないかもしれません。

ただし幸せが歪む原因、対人関係にかかわるトラブルを解決するための知識を学びたい方、教育や心理学の仕事に興味がある方には、知っておいて損はない情報が書かれていると個人的に思います。

他にもケーキの切れない非行少年を愛読している方には、ぜひとも読んでほしい書籍でもあります。